東出昌大『クローズ』酷評の真相|小栗旬版との決定的な差と再評価の理由
漫画家・髙橋ヒロシの金字塔を実写化し、日本中にヤンキー映画ブームを巻き起こした『クローズZERO』シリーズ。その正統な続編として2014年に公開された映画『クローズEXPLODE』は、公開から10年以上が経過した現在もなお、ファンの間で激しい賛否が交わされ続けています。前作で社会現象級の熱狂を生み出した小栗旬からバトンを受け取り、新世代の鈴蘭男子高校の頂点争いを背負ったのが、当時若手実力派として脚光を浴びていた東出昌大でした。
しかし、劇場公開直後からネット上を取り巻いたのは「前作と違いすぎる」「大爆死」という痛烈なバッシングでした。メガホンを取った鬼才・豊田利晃監督による作風の大胆な転換、興行収入の急落、そして主演を務めた東出昌大の演技に対する評価の二極化など、本作が背負わされた重圧と誤解は枚挙にいとまがありません。当時の興行データ、制作陣の狙い、そして現在になって再燃している「実は傑作だったのではないか」という再評価の機運まで、その真相を深く掘り下げます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:興行収入は前作の30億円台から約11.4億円へと半減し、数字上の失速が「酷評」の決定的な引き金となった。
- 要点2:三池崇史監督のエンタメ祝祭劇から、豊田利晃監督のダークで退廃的なアングラ青春劇への急激な作風変化がファンの期待と衝突した。
- 要点3:東出昌大の不器用な佇まいや早乙女太一・柳楽優弥らによる重厚な演技は、単なるヤンキー映画の枠を超えた純文学的青春映画として再評価が進んでいる。
なぜ『クローズEXPLODE』は酷評されたのか?小栗旬版との比較と興行収入の現実
映画『クローズEXPLODE』が激しい批判に晒された最大の要因は、先行した小栗旬主演の2作品が残した「規格外の成功体験」と、その続編として投下された本作のテイストがあまりにも乖離していた点にあります。興行通信社などの興行データによると、2007年の『クローズZERO』は興行収入約25億円、2009年の『クローズZERO II』は興行収入約30.2億円を記録し、邦画実写アクションの頂点に君臨しました。これに対し、第3弾として満を持して公開された『クローズEXPLODE』の最終興収は約11.4億円と、前作の半分以下にまで落ち込みました。
数字の低下以上に観客を戸惑わせたのが、演出手法の劇的な変化です。前2作を手掛けた三池崇史監督は、派手なアクション、わかりやすい友情と成り上がりのカタルシス、そして登場人物のケレン味を前面に押し出した「エンタメ祝祭劇」を構築しました。小栗旬演じる滝谷源治と山田孝之演じる芹沢多摩雄の激突は、王道の少年漫画的ダイナミズムを極限まで実写に落とし込んだものでした。
対して、『青い春』や『ナイン・ソウルズ』で知られる豊田利晃監督が引き継いだ『EXPLODE』は、徹底して泥臭く、乾いた虚無感と行き場のない暴力の痛みを描き出す「アングラ純文学」の様相を呈していました。劇場へ「前作のようなスカッとするお祭り騒ぎ」を求めて足を運んだライト層や若年層のファンは、暗く重苦しいスクリーンの空気に完全に梯子を外される格好となり、それが「期待外れ」「退屈」というSNSやレビューサイトでの猛烈なネガティブキャンペーンへと直結したのです。
【歴代データ比較】数字と作風で読み解く『クローズ』実写映画の変遷
歴代の映画シリーズを客観的な指標で比較すると、作品ごとに目指したゴールと市場の受け止め方の差異が鮮明に浮かび上がります。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 興行収入の推移 | ZERO:約25.0億円 ZERO II:約30.2億円 EXPLODE:約11.4億円 | メガヒット邦画の合格ラインは20億円以上 | 11億円は映画単体としては黒字水準だが、シリーズ前作比では大幅な落ち込みとみなされた。 |
| 監督と作風 | 三池崇史(ZERO系) 豊田利晃(EXPLODE) | 商業エンタメ路線 vs 作家主義・カルト路線 | 豊田監督特有の音楽連動、刹那的な若者の倦怠感描写が、漫画原作の実写化ファン層と噛み合わなかった。 |
| 主人公のキャラクター造形 | 滝谷源治(好戦的・成り上がり) 鏑木旋風雄(寡黙・戦いを拒む) | 少年漫画の王道主人公は前進型・好戦派 | 「鈴蘭の頂点を目指さない」主人公の受動的なスタンスが、物語の推進力を弱めたと批判された。 |
| 主要キャストの布陣 | 小栗旬、山田孝之、綾野剛 等 東出昌大、早乙女太一、勝地涼 等 | 公開当時のタレントパワーと認知度 | 当時は新世代の実験的配置に見えたが、岩田剛典や柳楽優弥らを含め、現在振り返ると極めて豪華な布陣。 |
鏑木旋風雄を演じた東出昌大の演技力|「大根」評と「ハマり役」説の二極化
本作の評価を語る上で避けて通れないのが、主演・鏑木旋風雄(かぶらぎ かぜお)を演じた東出昌大への視線です。当時、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』や『ごちそうさん』で一躍国民的な爽やか俳優として認知されていた彼が、鈴蘭男子高校という不良の巣窟のセンターに立つこと自体、世間には大きな驚きをもって受け止められました。
映画公開当時、ネット上では「セリフ回しが棒読み」「迫力に欠ける」といった手厳しい声が上がりました。小栗旬が見せた野獣のような咆哮や鋭利なカリスマ性と比較され、東出の抑制されたトーンが「感情が見えない」と受け取られたためです。しかし、当時の特番インタビューやメイキング映像で東出自身が「旋風雄は言葉で語る男ではなく、拳と背中で語る男」と語っていた通り、その芝居は演出意図に基づいた徹底的な引き算の演技でした。
身長189cmという圧倒的な体躯から繰り出されるボクシング仕込みの重い打撃、どこか世捨て人のように虚空を見つめる冷めた眼差しは、父の死という暗い過去を背負い、暴力の螺旋から距離を置こうとする鏑木旋風雄のキャラクター造形として完璧に成立していました。熱狂を煽るタイプではないものの、彼が醸し出す「孤独な佇まい」は、豊田監督が志向した退廃的な世界観において唯一無二の求心力を放っていたと言えます。

ネットの誤解と再発見された真価|早乙女太一と豪華キャストが放つ唯一無二の熱量
『クローズEXPLODE』を単なる失敗作として切り捨てる論調には、明らかな盲点が存在します。その最たるものが、脇を固めたキャスト陣の圧倒的なパフォーマンスです。
特に強烈な爪痕を残したのが、旋風雄のライバルとなる1年生・加賀美遼平を演じた早乙女太一です。大衆演劇で培われた超人的な身体能力を武器に、重力無視の軽やかな身のこなしで相手を破壊していく加賀美のアクションは、泥臭い東出のボクシングスタイルと完璧なコントラストを成していました。内面に狂気と孤独を飼い慣らす加賀美の危うい美しさは、シリーズ屈指の悪役像として今なお語り草となっています。
さらに、今や日本映画界のトップランナーとなった柳楽優弥が演じた「鈴蘭の最大勢力を率いる強羅徹」の怪演も見逃せません。静かに佇んでいるだけで周囲を威圧する圧倒的な存在感、黒幕然とした重厚感は、前作の山田孝之=芹沢多摩雄とは全く異なるベクトルの凄みを漂わせていました。他にも、勝地涼、三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典やELLY、さらには若き日の矢本悠馬など、現在では主役級となった俳優陣が画面の隅々にまで配置され、生々しい熱量を放出しています。
物語の結末(ネタバレ)においても、本作は頂点を極めて歓喜するような単純な着地を選びません。旋風雄と加賀美の死闘の末、勝敗を超えた虚脱感の中で鈴蘭の風に吹かれる若者たちの姿は、勝利の美酒ではなく「青春のやりきれなさ」を描き切ったものでした。このビターな後味こそが、公開から歳月を経た映画ファンを唸らせている要因です。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
ネット上の言説において長年定着してしまった誤解の一つに、「東出昌大のヤンキー映画がコケてシリーズを終わらせた」という単純化されたストーリーがあります。しかし、実際の映画ビジネスの構造と現場のファクトを検証すると、別の側面が見えてきます。
まず、興行収入11.4億円という数字は、前作との対比では敗北に見えるものの、当時の邦画アクション単体としては決して壊滅的な大赤字ではありません。むしろ十分な興行規模を維持していました。問題は製作費の規模感と、宣伝側が打った「大ヒットヤンキーアクションの最新作」というプロモーションと、豊田監督が創り上げた「作家性の強いダークなアングラ映画」という中身の乖離にありました。
また、本作は「駄作」と一括りにされがちですが、劇中を彩る音楽のセンスはシリーズ中でも突出しています。THE STREET BEATS、横道坊主といった歴代の魂を継承しつつ、MAN WITH A MISSIONやDragon Ash、さらにはKenKenの骨太なベースラインが炸裂する劇伴は、映画単体のグルーヴを極限まで高めていました。ヤンキー漫画の実写化という商業的制約の中で、妥協なきロック映画を撮り上げようとした実験作であったという視点は、もっと共有されるべき事実です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
本作は受け手のスタンスによって、評価が180度反転する劇薬のような映画です。視聴を検討する読者のために、明確な判断基準を提示します。
▼ 本作を心から楽しめる人(視聴を強く推奨)
- 『青い春』『ポルノスター』など、豊田利晃監督の乾いた映像美やロックカルチャーが好きな人
- 早乙女太一の人間離れした殺陣や、柳楽優弥の底知れぬ怪演を目撃したい人
- 成功や勝利ではなく、若者が抱える「孤独」「鬱屈」「やり場のない衝動」を描いたビターな青春映画を求めている人
- 東出昌大の長身を活かした重い肉体アクションと、言葉少なげな佇まいに魅力を感じる人
▼ 視聴を慎重に判断すべき人(好みに合わない可能性が高い人)
- 小栗旬版『クローズZERO』のような、派手で爽快感あるヤンキーエンタメやお祭り感を期待している人
- 仲間たちと一致団結して鈴蘭のテッペンを目指す、王道の成り上がりサクセスストーリーが見たい人
- 軽妙なギャグやテンポの良い会話劇を作品の第一条件に置く人

【東出昌大×クローズ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:『クローズEXPLODE』は漫画原作のどのエピソードを描いたものですか?
A1:本作は髙橋ヒロシの原作漫画『クローズ』そのもののストーリーではなく、映画オリジナルストーリーです。時系列としては小栗旬演じる滝谷源治らが鈴蘭を卒業した約1か月後、新学期が始まった鈴蘭男子高校を舞台にしており、原作の主人公・坊屋春道が登場する直前の空白期間を描いた外伝的位置づけとなっています。
Q2:小栗旬や山田孝之など前作のメインキャストは出演していますか?
A2:滝谷源治役の小栗旬や芹沢多摩雄役の山田孝之は出演していません。世代交代を明確にするため、主要な生徒役はほぼ一新されました。ただし、鈴蘭高校近辺の喫茶店のマスターやヤクザ役など、一部の周辺キャラクターを演じる大人のキャストは前作から継続して出演し、世界観の連続性を保っています。
Q3:なぜ三池崇史監督から豊田利晃監督へと交代したのですか?
A3:公式なプロデューサー陣のコメントによると、前2作で「源治と芹沢の物語」が完全に完結したため、新世代の鈴蘭を描くにあたってシリーズの焼き直しを避け、全く新しい風を吹き込む意図で豊田利晃監督へのオファーが決まりました。不良少年たちの焦燥感を描く名手として知られる豊田監督の手腕に賭けた、意欲的な抜擢でした。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
映画『クローズEXPLODE』は、前作の巨大な影とプロモーションのミスマッチによって、公開当時は「酷評」という理不尽なレッテルを貼られてしまった不遇の作品でした。しかし、商業エンタメの枠組みをあえて外し、若者の暴力の本質や乾いた孤独にカメラを向けた豊田利晃監督の作家性は、年月を経るごとにその重みを増しています。
東出昌大が体現した鏑木旋風雄の不器用で寡黙な強さ、早乙女太一の圧倒的な華と狂気、そして若き日のトップ俳優たちが放っていた剥き出しの熱量は、今見返しても色褪せることはありません。「前作と違う」という色眼鏡を外し、一本の骨太な青春ノワール映画として対峙したとき、本作は観る者に強烈な衝撃と問いを投げかけてくるはずです。 (出典: 東 出 クローズ(Yahoo!ニュース))